本文へ移動

お知らせ

月刊専門誌「運転管理」3月号(モビリティ文化出版(株))の『判例研究』を執筆しました(担当者:長浜周生弁護士)。
2005-03-10
月刊専門誌「運転管理」3月号『判例研究』(担当者:長浜周生弁護士)
今回は、片側2車線の駐車禁止道路において、第1車線を進行してきた自動二輪車が、駐車するため第2車線から第1車線に車線変更してきた大型貨物車に進路を塞がれたため、違法駐車中の車両に衝突した事例をとりあげます(横浜地裁平成16年6月25日判決、自動車保険ジャーナル第1565号7頁)。

(事故の概要)

事故の内容は、次のようなものでした。
●日時●平成10年3月20日 午後0時55分ころ
●場所●神奈川県横須賀市内の片側2車線駐車禁止道路
●態様●
前記日時場所において、片側2車線の第2車線を走行していた自動二輪車(X車)が、同じく第2車線を先行していた大型貨物車(Y車)に追いつき、一旦減速した後、左追い越しをかけようとして第1車線に出たときに、Y車が道路左端に違法駐車していたZ車の前に駐車しようと第2車線から第1車線に車線変更してきたため、X車がこれを回避しきれず転倒し、違法駐車していたZ車に衝突した。これにより、X車を運転していたXが右肩甲骨・右橈骨骨折等の傷害を負った。

本件事故について、被害者であるXが、Y車の運転者Y1と同車所有者Y2及びZ車所有者Zに対し、後遺障害損害4086万6774円を支払うよう訴えを起こしました。

(Y車の責任)

判決では、Y1及びY2の責任が以下のとおり認められました。

Y1は、進路変更するにあたって、サイドミラーで左後方の状況を確認したが車両の姿は一切映っていなかったと主張しましたが、判決では「確認した」とする供述は信用性に乏しいとされ、また、Y車の全長は12メートルもあり、Y車がZ車の駐車位置を超えるか超えないかの地点で左車線への進路変更を開始すれば駐車しているZ車の横に空いていたスペースを直ちに塞ぐことになるのであるから、Y1はより早期に方向指示器を出して後続の車両に進路変更を予期させるべきであったとして、方向指示器を出すのが遅きに失したとして、本件事故に関するY1の過失を認めました。

Y2も車両所有者として自賠法3条に基づきY1同様の責任が認められました。

(Z車の責任)

本件事故現場は、直線道路で前方の見通しもきく道路である上、事故発生時刻も午後0時05分と昼間であったこと、Z車はハザードランプを点けて停車しており、後方からの進行車両がZ車を確認するのは容易であって、現にY1、Xいずれも本件事故現場のかなり手前において、Z車が同所に駐車していることを認識していたことが認められること、Z車には構造上の欠陥も機能の障害もなかったこと等から、賠償責任は認められませんでした。

(X車の責任=過失相殺)

本件事故当日は、風が強く、雨粒も風に乗ってぱらぱら降っていた状態で、道路は濡れていて滑りやすい状態にありました。かかる天候では自動二輪車を運転するにあたって特に慎重な運転をすべきところ、Xは、制限速度時速40キロメートルのところを50キロメートル以上の速度で走行したり、左車線にはZ車が駐車していて同車線内の通過可能部分が通常より狭くなっている場所付近で禁止されている左追い越しをしたり、走行中にズボンのウエスト部分に紐で縛らず通帳やフィルムなどを入れて、注意力を欠くような状態で走行していたこと等の過失があることを考慮し、Xには本件事故発生につき50%の過失相殺が認められました。

(駐車・停車の区別等)

なお、本件Zは、Z車は「駐車」でなく「停車」していたに過ぎないと主張していました。この点、駐車とは、「車両等が客待ち、荷待ち、貨物の積卸し、故障その他の理由により継続的に停止すること(貨物の積卸しのための停止で5分を超えない時間内のもの及び人の乗降のための停止を除く。)又は車両等が停止し、かつ、当該車両等の運転をする者がその状態を離れて直ちに運転することができない状態にあること」をいいます(道路交通法第2条1項18号)。本件Zは、妻を迎えに行く目的で、同人の勤務先の前で同人が出てくるのを待っていたものであって、妻が出てくるまでは待っている意思であったので、仮にその停止時間が2~3分であったとしても、「停車」でなく「駐車」に該当するとされています。「駐車」と「停車」の区別は非常に微妙なところがありますので、注意が必要です。

また、本件事故にあるように、大型車両の進路変更の際には、十分な後方確認、及び、方向指示器の早期点灯が重要であることは言うまでもありません。

以上

「運転管理」平成17年3月号より掲載。但し、表現が一部異なる部分があります。
TOPへ戻る