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お知らせ

月刊専門誌「運転管理」10月号(モビリティ文化出版(株))の『判例研究』を執筆しました(担当者:大野澄子弁護士)。
2005-10-10
月刊専門誌「運転管理」10月号『判例研究』(担当者:大野澄子弁護士)
今回は、駐車場に駐車中の大型貨物自動車から車道内にはみ出していた積荷に、小型貨物自動車が衝突した事案で、双方の過失割合が5割とされたケースを取り上げます(静岡地裁浜松支部平成15年5月28日判決、自動車保険ジャーナル1522号20頁)。

(事故の概要)
●日時●平成13年7月25日午後2時15分ころ
●場所●△△県□□市 片側1車線道路
●被害車両●A車(X1運転、X2組合所有、X3運輸使用の小型貨物自動車)
●加害車両●B車(Y1運転、Y2会社所有の大型貨物自動車)
●態様●X1の運転するA車は、片側1車線道路を進行中、Y2会社の駐車場に駐車中のB車の前部から突き出していた積荷(高さ2.9mの位置で、車道内に0.6m突き出している積荷リーダー)に衝突、暴走し、A車全損等の損害が発生しました。

(裁判の争点)
A車の所有者であるX2組合は車両損害等について、同車の使用者であるX3運輸は休車損害等について、またA車について自動車保険金を支払った保険会社X4は商法662条による代位求償権に基づいて、B車の運転者Y1及びその使用者Y2会社に対し、損害賠償の連帯支払を求めました(民法709条、715条)。

(裁判所の判断)

裁判所は、Y1、Y2が連帯して損害賠償責任を負うと判断しましたが、A車の運転者X1にも相当大きな過失があるとして、その過失割合をY1が5割、X1が5割であると判断しました。裁判所の認定した事実、及び判決の理由は以下のとおりです。
(1)本件事故現場は、車道幅員7mの歩車道の区別のある片側1車線の道路であり(歩道は車道の両側に設けられ、幅員1.1m)、直線で見通しがよく、非市街地で車両の交通量は少なかった。
(2)Y2会社の駐車場は本件道路に面しているが、Y1は、他の社員の指示により、B車を運転して本件道路側に移動し、その後10分間位、停車させたB車の車内で休息していた。
(3)B車の長さは11.9mで、B車の上部には積荷リーダーが積載されていたが、リーダーの全長は16.6m、太さが直径0.6mで、車体の前部に1.7m、車体後部で1.5mそれぞれ車体から突き出ており、リーダーの前部先端は地上から約2.9mの位置にある。リーダーの先端は、本件道路の車道部分に少なくとも約0.6m(1.7m-歩道の幅員1.1m)突き出していたが、その先端には、そこに障害物があることを明示するものは取り付けられていなかった。
(4)X1は、A車を運転して時速40~50kmで本件道路を走行中、本件事故現場に差し掛かったところ、進路前方左側に車道にはみ出して停車しているワゴン車を認めたがそのまま進行し、ついでB車をその手前20~30mの地点で認め、ワゴン車を避けてその横を通過したところで突き出ているリーダーを発見し、これを避けようとしたが及ばず、A車の車体の左側がリーダーに衝突し、その後A車は前方左側のブロック塀などに衝突した。
(5)B車は運転中ではないので、リーダーの積載方法が道路交通法57条1項、同法施行令22条1項3号に直接違反するものではないとしても、ワゴン車が影となってリーダーが見難い状況になっていたのであるから、少なくとも遠方からでもリーダーが確認できるように先端に赤い布を付けるなどの危険防止措置を講ずべき義務があったところ、これを懈怠している点、及びそもそも車道にリーダーを突き出していた点で過失があるので、Y1及びその使用者であるY2には、X2らが受けた損害を賠償する責任がある。
(6)他方、停車中のワゴン車のためにB車やリーダーの存在が見難かったとはいえ、本件道路の見通しは良好で、X1からY2会社の駐車場への見通しを妨げるものはなかったこと、リーダー先端の位置や、本件事故前には(本件道路を通過した車両が複数あったが)同様の事故は発生していなかったことを考慮すると、前方の状況をより注視していれば早期にリーダーを発見し、容易に本件事故を回避し得たのに、本件事故直前に至るまでリーダーを認めなかった点で、X1にも相当大きな過失がある。上記諸事情に照らすと、その過失割合は、Y1が5割、X1が5割と認めるのが相当である。

(積荷の積載の制限について)
道路交通法57条1項は、「車両(略)の運転者は、当該車両について政令で定める乗車人員又は積載物の重量、大きさ若しくは積載の方法(略)の制限を超えて乗車をさせ、又は積載をして車両を運転してはならない。」と定め、これを受けた同法施行令22条1項3号は、「積載物の長さ、幅又は高さは、それぞれ次に掲げる長さ、幅又は高さを超えないこと。イ 長さ 自動車の長さにその長さの十分の一の長さを加えたもの(略)」と規定しています。B車は運転中ではなかったため、これら法令に直接違反したわけではありませんが、車道内に積荷がはみ出しているのに、危険防止措置を怠った過失が認定されました。衝突したX1にも前方不注視の過失が認められたとはいえ、駐車中の車両についても、その積荷の積載方法については安全性に十分注意する必要があるといえます。

以上

「運転管理」平成17年10月号より掲載。但し、表現が一部異なる部分があります。


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