今回は、交通事故の被害にあった運送業者が、荷主からの指定時刻、場所に納品できなかったことにより荷主に生じた損害は、交通事故と相当因果関係のある損害として加害者に賠償義務があるか、また、事業用貨物車の休車損害につき、事故車以外の車両で運送業務を行うことができる場合に休車損害が認められるか、が問題となった事案を取り上げます(大阪地裁平成17年9月20日判決、自動車保険ジャーナルNo.1634・19頁〜)。
(事故の概要)
事故の内容は、次のようなものでした。
●日 時●平成15年8月〇日午後11時ころ
●場 所●愛知県〇〇区内の交差点
●態 様●X所有、B運転の大型貨物車が交差点で減速中、A(死亡)運転の大型貨物車に追突されました。
(争点)
裁判では、次の2点が問題となりました。
交通事故の被害にあった運送業者Xは、本件事故当日、C会社から建築資材等の搬送を依頼されており、搬送先はD会社の関係する建築施工現場であったが、本件事故により積荷である建築資材等が損壊し、建築施工現場において予定していた作業を行うことができず、当該建築資材の再製作及び作業を別途行うための費用約72万円がかかった。この費用は、XがC会社に対して支払った。荷主からの指定時刻、場所に納品できなかったことにより荷主に生じたこの損害(約72万円)は、交通事故と相当因果関係のある損害として加害者Aの遺族に賠償義務があるか。
事業用貨物車であるX所有、B運転の大型貨物車の休車損害につき、事故車以外の車両で運送業務を行うことができる場合に休車損害が認められるか。
(裁判所の判断)
裁判所は、次のとおり判断しました。
運送業者は、荷主から積荷を預かって指定された場所に指定された時刻までに搬送することを業として行っており、交通事故等によって、指定された時刻までに指定場所に積荷を届けられなかったことによって荷主に生じた損害について賠償しなければならない立場にあることは、社会通念上、容易に予測できる事情であり、積荷が建築資材であれば、その資材を使った建築工程において指定された時刻までに指定場所に届けられなければ工程が遅れることによる損害が生じ、その損害は建築資材を納入する立場にある荷主が賠償しなければならなくなることも、また、容易に予測できる事情というべきであるので、本件においてXがC会社に支払った約72万円は、本件事故に起因する相当因果関係の範囲内の損害としてYら(Aの遺族)の賠償責任の範囲内というべきである。
平成15年3月31日現在のXの保有している事業用自動車は32両であること、Xの事業に従事している運転者数は27名であること、平成14年4月1日から平成15年3月31日までのXの輸送実績における延べ実働車両数は4910台、延べ実在車両数は8400台であったことが認められる。そうすると、その期間におけるXの運送車両の稼働率は平均すると約58%であったことが認められる。それを前提とすると、本件事故による修理のためにX車が一定期間使用できなかったとしても、それ以外の車両で運送業務を行うことが可能であったと推認されるが、それに対して、XからX車の修理期間においては特に稼働率が高く、他の車両等による代替ができずに得べかりし利益を失った等の立証はない。以上から、本件事故による休車損害は認めることができない。
(休車損害について)
営業用車両(緑ナンバー等)が交通事故により損傷を受けた場合、その損傷を修理し、または買い替えるのに相当な期間について、その車両を運行していれば得られたであろう利益相当額について休車損害が支払われることがあります。休車損害は、交通事故によって通常生ずべき損害と解されていますが(最一小判昭和33年7月17日民集12−12−1751)、全ての営業用車両の交通事故について休車損害が支払われるわけではなく、休車損害が実際に支払われるかどうかの要件や、その算定方法が問題となることがあります。
なかでも、休車損害が支払われる要件としてよく指摘されるのは、「被害者が事故車以外に使用できる車両(遊休車)がないこと」が必要かどうかです。被害者は、事故車を運行していれば得られたであろう利益を、遊休車を利用することにより確保して、損害の拡大を防止すべきであったといえますので、本件において判断されたとおり、買替期間中もしくは修理期間中に遊休車がなかったことは、休車損害が認められる要件になると考えられます。この点に関する裁判例の判断は分かれていますが、本件と同様の考え方で判断した裁判例もあります(名古屋地判平成13年7月6日自動車保険ジャーナル1435号等)。
また、休車損害の算定方法としては、1日当たりの利益に休車期間(日数)をかけることにより算定します。そして、1日当たりの利益は「売上高(運賃収入)−経費」の算式により算定する裁判例が大半を占めています。
休車損害を被った被害者としては、休車損害の要件と金額の裏づけとなる客観的資料を積極的に収集して、休車損害を請求することが必要であると思われます。 |